第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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はじめに:Stevens-Johnson症候群(SJS)は,皮膚・粘膜・眼症候群と呼ばれ,皮膚粘膜移行部の重篤な粘膜病変,結膜炎,全身性紅斑,表皮の水疱やびらんを呈し,ときには死に至る重篤な疾患である.今回我々は,皮疹や結膜炎を欠き粘膜生検が診断に寄与したSJSの1例を経験した.
症例:68歳,女性.
主訴:咽頭痛.
現病歴:4日前より咽頭痛があり,NSAIDsを内服した.翌日症状が増悪し近医内科を受診した.咽頭炎の診断で抗菌薬等の処方を受けたが,症状増悪のため当院を受診した.
経過:38°Cの発熱,鼻腔から咽喉頭粘膜の著しいびらんと白苔の付着を認めた.血液検査では,WBC 23,800/ul,CRP 27.1 mg/dlと著明な炎症反応高値を認めた.即日入院とし,感染症や自己免疫疾患,薬剤性を鑑別とし,抗生剤点滴とステロイド全身投与を開始した.入院同日に上咽頭粘膜より,入院第3病日に口腔粘膜の生検を施行したが,いずれも急性・慢性炎症の混在,菌塊形成という結果であった.入院第5病日に鼻腔粘膜のびらんが増悪したため,同部の粘膜生検を行った.結果,表皮の壊死性変化を認めたためSJSと診断した.第7病日までステロイドを漸減投与とし,入院第13病日に後遺症なく退院となった.
考察:SJSでは非典型的多形紅斑・結膜炎が特徴的とされるが,診断基準では副所見となり必ずしも呈するとは限らない.皮疹が遅発する症例や皮疹を欠く症例では,診断の遅れから死亡率が高くなり,後遺症を残す症例も少なくない.SJSにおいては特異的な検査がないため診断には生検が必須と考えられ,できれば迅速病理診断が望ましい.皮膚粘膜移行部の重篤な粘膜病変を認める症例では,皮疹を欠く場合もSJSを念頭に置き,早期に粘膜生検を施行するべきである.粘膜生検については,もっとも炎症が高度と思われる部位を選択し,正常粘膜とびらん面との境界を含めてできるだけ広範囲に採取することが診断率を高めるものと考える.

2016/06/23 17:30〜18:06 P25群

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