第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【はじめに】結節性筋膜炎は,四肢に好発する良性の線維芽細胞の反応性増殖性病変であるが,増大傾向があり浸潤性の発育を呈するため臨床的に悪性腫瘍との鑑別が難しいことがある.今回,頬部に生じた稀な結節性筋膜炎例を経験したので報告する.
【症例】3歳女児.主訴は右頬部腫脹.現病歴では,入院1ヵ月前より,特に誘因なく右頬部腫脹が出現し,増大傾向を認めたため近くの耳鼻咽喉科を受診した.CTにて上顎骨の破壊を伴った腫瘤性病変を指摘され,精査目的に当科紹介となった.前庭水管拡張症の合併がある.入院時身体所見では,右頬部に20 mm大の硬い,可動性に乏しい腫瘤を触知した.画像所見では,右頬部皮下に上顎骨から頬骨表面に接する径14×17 mm大の腫瘤性病変を認め,CTで骨皮質の破壊を伴い,MRIの拡散強調画像で淡い高信号,T1強調で筋肉と等信号,short-tau inversion recovery(STIR)撮像法では軽度高信号,造影では辺縁のみに増強効果を認めた.骨原発腫瘍の術前診断にて手術を行った.手術は,右犬歯窩アプローチで生検を行った.右上BからEの間で歯齦部切開し,骨膜下に沿って剥離した.眼窩下神経の外側で腫瘍被膜を確認した.腫瘍は上顎骨前壁より発生している印象であった.腫瘍被膜は硬く,鋭匙鉗子で把持し組織採取を行うと,腫瘤の大部分が摘出された.出血は少量であった.病理組織像は厚い膠原線維束を伴った比較的核型が均一な紡錘形細胞の錯綜増殖を認めた.免疫染色では筋系マーカーが陽性であった.発生部位より結節性筋膜炎の最終診断となった.術後2ヵ月で頬部の残存病変は消退した.その後,術後1年が経過した現在まで局所再発所見は認めていない.
【結論】結節性筋膜炎は様々な画像所見を呈するため,増大傾向を示す腫瘤性病変では腫瘍性病変だけでなく,結節性筋膜炎も鑑別する必要があると考えられた.

2016/06/23 17:30〜18:06 P25群

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