第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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メトトレキセート関連リンパ増殖性疾患(以下MTX-LPD)は主として慢性関節リウマチに対する治療としてMTXが投与されていた患者に生じるリンパ増殖性疾患である.今回我々は上顎歯肉に生じたMTX-LPDと診断し,MTXの休薬のみで寛解に至った症例を経験したので文献的考察を加え報告する.
症例は67歳女性.主訴は左頬部腫脹と疼痛.X年に左上歯の抜歯を近医歯科で施行.その後左上歯肉の腫脹がみられ,腫脹が日々増悪し上顎癌も否定できないことから当センター紹介受診となった.初診時所見としては左頬部腫脹,左上歯肉の潰瘍性変化がみられ,病変部は易出血性であった.同日施行した副鼻腔造影CTでは上顎骨の骨破壊を伴う上顎洞の腫瘍性変化がみられ,上顎洞悪性腫瘍と考えた.既往に慢性関節リウマチがあったが内服薬の詳細は不明であった.MTX-LPDも鑑別の1つと考え局所の組織生検に加え可溶性IL-2レセプター(以下IL-2R)やLDHなど含めた各種血液検査を施行した.組織生検の結果は慢性炎症の診断であったがIL-2Rが1131 U/mlと高値であったことと,副鼻腔MRIで腫瘍性変化が上顎骨に限局していたことからMTX-LPDを強く疑い再度局所生検を施行した.組織生検の結果MTX-LPDに矛盾しない結果であったため整形外科と相談しMTXを休薬することで経過観察を行った.約1ヵ月後に頬部腫脹は著明改善し,MRIで腫瘍の縮小が確認できた.血液検査上IL-2Rも651 U/mlまで減少し,MTXの休薬のみで寛解に至っている.
腫瘍性変化を生じた患者でMTX内服中であれば,MTX-LPDを念頭において診断をすすめることが重要である.またMTXの休薬の有無に関しては整形外科や膠原病内科などと相談のうえで行い,改善がみられなければ化学療法の必要性を含め血液・腫瘍内科に判断を仰ぐことも必要と考える.

2016/06/23 18:06〜18:30 P24群

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