メトトレキサート（MTX）は低分子疾患修飾性抗リウマチ薬に分類される慢性関節リウマチ（RA）の治療薬の一つである．近年，MTX治療薬のRA患者におけるリンパ増殖性疾患の合併報告が蓄積され，注目されている．今回我々は肺癌の鑑別が必要な肺腫瘤と，頸部リンパ節腫大を伴うMTX関連リンパ増殖性疾患の2例を経験したので報告する．
症例1は74歳，女性．15年前からRAにてMTXの処方を受けていた．2ヵ月前からの咽頭違和感にて当科受診．舌根部右側の潰瘍性病変を認め，生検にて肉芽組織であった．頸胸部CTにて両肺野に多発結節影，両頸部リンパ節腫大を認めた．右頸部リンパ節生検にてMTX関連リンパ増殖性疾患に矛盾しない所見であった．MTX休薬1ヵ月後のCTで多発肺結節影は消失，頸部リンパ節縮小，舌根部潰瘍も消失した．
症例2は67歳，男性．10年前からRAにてMTXの処方を受けていた．1週間前から両耳下腺腫大があり当科受診．頸部MRIで両耳下腺のびまん性腫大，両顎下腺腫大，両頸部リンパ節腫大を認めた．頸胸部CTでは両肺野に多発結節影，縦隔，左肺門リンパ節腫大を認めた．左顎下腺，耳下腺の病変部から細胞診を行うもclass2であった．確定診断のために顎下腺摘出を施行．病理ではMTX関連リンパ増殖性疾患に矛盾しない所見であった．MTXは手術直前から休薬し，急激に唾液腺腫脹，頸部リンパ節腫大は改善した．5ヵ月後のCTでは肺野の多発結節影，縦隔，左肺門リンパ節腫大は消失した．
2016/06/23 18:06〜18:30 P24群