第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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脳原発のNon-Hodgkins lymphoma(NHL)は悪性リンパ腫全体の1.7%,副鼻腔原発では2%ほどを占めると言われており,なかでも蝶形骨洞はかなり稀な部位にあたる.NHLのDiffuse Large B-cell Lymphoma(DLBCL)は進行が早いこともあるため,早期発見が望ましいが,診断が困難であることが多い.当院にて眼窩尖端症候群を呈したNHLを3例経験したので文献的考察を含めて報告する.
症例1は80歳男性,開眼不能と眼球固定を主訴に受診した.頭部CTおよびMRIでは骨破壊を伴う軟部陰影を蝶形骨洞と後部篩骨洞に認めた.破壊型真菌症が疑われたが,鼻内視鏡下生検にてDLBCLの診断であった.化学療法を開始し,神経症状は著明な改善を認めた.
症例2は70歳男性,眼痛,複視,視野異常と眼瞼下垂を主訴に受診した.CTおよびMRIにて海綿静脈洞に軟部陰影を認めた.Tolosa Hunt症候群,サルコイドーシス,真菌症などが鑑別に挙がったが,鼻内視鏡下蝶形骨洞粘膜生検にてDLBCLの診断であった.
症例3は81歳男性,眼瞼下垂と眼球固定を主訴に受診した.頭部MRIでは斜台と海綿静脈洞に造影効果を伴う領域を認め,硬膜肥厚像も認めたことからANCA関連血管炎も鑑別に挙がったが,LDHおよび可溶性IL-2Rの高値を認めたため悪性リンパ腫が最も疑われた.鼻内視鏡下の生検を行う予定であったが,心不全による循環動態悪化を認め死亡に至った.
いずれの症例も眼球運動障害などの神経症状が初発であり,画像では感染症や炎症性疾患との鑑別が困難であった.どの症例もLDHと可溶性IL-2Rの高値を認めたが,確定診断には鼻内視鏡下副鼻腔生検を必要とした.神経症状を伴う蝶形骨洞や頭蓋底の疾患の鑑別は多種あるが,それぞれの特徴を理解し,必要な検査を施行することが重要である.悪性リンパ腫を疑った時点で生検を実施し診断確定がなされることで早期での治療介入を開始することが可能となる.

2016/06/23 17:30〜18:06 P23群

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