第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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悪性リンパ腫は耳鼻咽喉科においてしばしば遭遇する疾患であるが,若年者,それも妊娠中に発症することは稀である.今回妊娠中に悪性リンパ腫を発症した症例を経験したので報告する.
症例は29歳女性であり,数日前からの右頸部腫脹のため当科を受診した.妊娠30週であり,既往歴はなく,小麦とロキソプロフェンナトリウムへのアレルギーがあった.右頸部に圧痛のないリンパ節の集簇を触れたが,その他の頭頸部領域に明らかな異常所見は認められず,頸部リンパ節炎の診断で,経過観察となった.2週間後の再診時に改善が認められなかったため,採血検査および頸部超音波検査を行った.採血検査では可溶性インターロイキン2受容体(以下sIL-2R)は1410 U/mlと高値であり,超音波検査では両側頸部に節門構造の保たれたリンパ節が散在しており,最大のもので長径38 mm,短径27 mm,厚み16 mmであった.穿刺吸引細胞診ではclass2であり,小リンパ球主体の細胞所見であり,明らかな異型細胞は認められなかった.sIL-2Rは高値であったものの,異型細胞は認められなかったため,炎症の可能性を考え,さらに2週間経過観察としていた.しかし左鼠径部のリンパ節腫脹も伴うようになったため,局所麻酔下で右頸部リンパ節の生検を行ったところ,悪性リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫)と診断され,高次医療機関へ紹介受診となった.その後同院産婦人科において37週1日に誘発分娩を行い,女児を出産したのち,血液内科において化学療法が行われる方針となった.
妊娠中に悪性リンパ腫を発症することは比較的まれであるが,診断や治療が遅れがちになるといわれ,死亡した症例も報告されているため,早期診断と妊娠継続の可否も考慮したうえでの治療方針の決定が重要と思われる.

2016/06/23 17:30〜18:06 P23群

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