第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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副鼻腔は眼窩や視神経管と隣接し,種々の副鼻腔疾患が視神経障害の原因となることが知られている.今回鼻性悪性リンパ腫により視神経障害を来した症例を経験したので報告する.
症例は73歳女性.2週間前より右眼周囲から右上顎にかけての鈍い疼痛を主訴に当院眼科を受診.視力検査や眼圧検査では異常所見を認めなかった.精査目的に単純MRIを施行し,右上顎洞から篩骨洞,眼窩内側にかけてT1強調でやや低信号,T2強調で高信号を呈する軟部陰影を認めた.6日前より右眼の視力低下を自覚し,眼科再診時に0.8から0.06へと急激な視力低下を認めていたため,副鼻腔腫瘍もしくは副鼻腔炎による視神経障害が疑われ,同日当科に紹介となった.当科初診時,右眼周囲に眠れないほどの激しい疼痛を訴え,鼻内内視鏡所見では右中鼻道より排膿を認めたが,腫瘤性病変は認めなかった.副鼻腔造影CTではMRI所見と同部位に淡い造影効果を伴う軟部陰影を認め,眼窩内軟部陰影により右内直筋は圧排されていたが眼窩内側壁を含め骨破壊所見は認めなかった.同日より入院し抗生物質,ステロイドの点滴加療を行ったが効果を認めず,入院4日目に症状改善・診断的治療目的に右内視鏡下副鼻腔手術を施行した.術中所見では右篩骨洞を中心として膿汁の排出と広範な壊死組織を認めたが,腫瘤性病変は認めなかった.術後,疼痛は著明に改善したが視力は改善しなかった.病理検査ではびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と診断された.
本症例の視神経障害の原因について考察した.骨破壊所見がないにもかかわらず,眼窩内に陰影を認めており,炎症や膿瘍の波及が考えられるが,悪性リンパ腫が浸透性に骨浸潤を起こすという報告もあり,腫瘍による圧迫や腫瘍の直接浸潤による可能性も考えられた.投薬治療が無効であったことや術後も視力障害が改善しなかった経過を鑑みると腫瘍の直接浸潤が視神経障害の原因である可能性が示唆された.

2016/06/23 17:30〜18:06 P23群

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