第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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入院早期に咽後膿瘍が疑われた川崎病の症例を経験したのでここに報告する.
症例は8歳男児.3日前からの左耳介後部痛,40°Cの発熱を主訴に前医を受診した.抗菌薬の内服および点滴にも反応なく,頸部痛の増悪を認めたため当院紹介となった.既往歴に川崎病を認めるも生後11ヵ月時に治癒した.内服薬やアレルギーには特記事項なし.初診時の身体所見は意識清明であるが,39.6°Cの発熱が持続した.頸部は左回旋位で固定し,疼痛が強く正面視は困難であった.開口は1横指であり,頸部リンパ節は発赤,腫脹,および著明な圧痛を認めた.喉頭ファイバー所見では被裂部や喉頭蓋の浮腫を認めなかったが,造影CTで上咽頭後部に造影効果を伴わない低吸収域と多数の頸部リンパ節を認めた.扁桃周囲の膿瘍形成は認めなかった.咽後膿瘍と診断し,同日より入院とした.気道狭窄や血圧低下を認めず,年齢を考慮して即日の切開排膿は見合わせ,PIPC/SBT 2.25 g q8hの投与を開始した.第1病日の開口障害は2横指,WBC 11400 CRP4.51であった.第2病日に臀部と背部の皮疹,結膜充血を認めた.その後も頸部回旋や開口障害など局所所見は若干の改善を認めるも,38°C以上の発熱と炎症反応高値が続き,川崎病の再発疑いで第4病日に小児科へ紹介した.川崎病の診断基準主要6症状すべてを認め,心エコー上も冠動脈瘤が確認され,川崎病の確定診断に至った.γグロブリン療法,アスピリン投与が開始され,翌第5病日に頸部所見は著明に改善,第6病日には解熱し,経過良好で第12病日に退院した.
川崎病の造影CTにて咽後間隙にring enhancementを伴わない低吸収域の存在を指摘する報告はこれまでにも複数存在し,発熱,頸部リンパ節腫脹を伴う咽後膿瘍疑いの小児患者においては,川崎病も念頭におき,外科的な排膿について慎重に判断すべきと考える.

2016/06/23 18:00〜18:36 P22群

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