第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

プログラム

No

タイトル

【はじめに】結核は,戦後,新規罹患患者数は約34万人(人口10万対500以上)で,死亡率第1位の疾患であったが,その後,約50年間に,約2万人(人口10万対16.1)にまで激減した.しかしながら,結核の減少は鈍化し,撲滅に至っておらず,欧米諸国に比べるとその罹患率は高く,日本はいまだ中蔓延国に位置づけられている.結核全体のなかでも喉頭結核は稀で,さらに声門下に生じるものは少ない.今回,我々は,声門下腫瘍が疑われた喉頭結核症例を経験したので報告する.
【症例】55歳女性.主訴は咳嗽,嗄声.既往歴は特記事項なく,結核の既往,家族歴もなかった.喫煙歴もなかった.当科受診2ヵ月前から咳嗽が出現し,1ヵ月前に,近医内科受診.鎮咳薬を処方され,内服するも,改善なく,嗄声も出現したため,2週間前に近医耳鼻咽喉科を受診した.その際,声門下に肉芽腫様病変を認め,ステロイドネブライザー等,保存的加療をうけるも改善しないため,声門下腫瘍を疑われて,精査加療目的に当科紹介受診となった.当科初診時,右声門下に白苔を伴う赤く腫脹した肉芽様病変を認めた.喉頭内視鏡下に生検試みるも,咽頭反射が強く,生検できず,3週間後,頸部造影CTを行ったところ,左下肺野に粒状影や,すりガラス陰影を認めた.喉頭所見,CT所見から,悪性腫瘍,結核を鑑別に挙げ,クオンティフェロン,喀痰検査,生検を行ったところ,クオンティフェロン:1.33 陽性で,喀痰検査からはガフキー2号が検出され,PCRも陽性であった.病理では悪性所見はなく,喉頭および肺結核の診断となり,呼吸器内科で内服加療を行った.加療開始2ヵ月目に細菌検査,PCRでは陰性化し,3ヵ月目に喉頭病変は消失した.
【まとめ】長引く咳や改善しない喉頭病変を診た時は,結核も念頭におき,診療に当たるべきである.

2016/06/23 18:00〜18:36 P22群

操作