第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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川崎病は1967年に川崎富作医師によりはじめて報告された,小児に好発する原因不明の熱性疾患である.本疾患は世界中で認められるが,アジア特に日本においてもっとも罹患率が高く,日本ではこれまで30万例以上の患者が発生している.発症年齢は4歳以下が約90%を占め,10歳以上の割合は約1%である.最も重要な合併症である冠動脈瘤の形成は予後に関係するため迅速な診断と治療が重要である.今回われわれは,発熱,咽頭痛,右上頸部痛の症状で発症し,診断に苦慮した川崎病の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
症例は15歳の女性で3日前から発熱,咽頭痛,右頸部痛が出現し,近医で抗菌薬を処方されるも改善しないとのことで当院耳鼻咽喉科受診となった.体温は38.2°Cで右口蓋扁桃の発赤,腫脹と右軟口蓋の発赤を認め,喉頭蓋舌面右側にも軽度発赤を認めた.右耳下部に母指頭大のリンパ節が数個集簇するかたちで触知され,圧痛を伴うが波動はなく皮膚の軽度発赤と熱感を認めた.右扁桃周囲炎,右頸部リンパ節炎を疑い入院でセフトリアキソン(CTRX)を開始した.翌日(第5病日)臍周囲に痒みを伴わない粟粒大の皮疹が出現した.薬疹を疑いCTRX中止し,スルバクタム・アンピシリン(SBT/ABPC)に変更した.しかし,第6病日には皮疹が両腕,腹部全体,背部までひろがり薬疹や中毒疹も否定できなかったため抗菌薬はクリンダマイシン(CLDM)に変更した.この間,発熱は持続していた.第7病日には舌の発赤(莓舌)および眼球結膜の充血,手掌・足底の紅斑が出現した.第7病日になって主要症状6つがそろい川崎病の診断となった.
川崎病ではいくつかの主要症状が同時に出ることもあれば,後日おくれて出現する場合もある.発症年齢に関わらず抗菌薬不応性の発熱・頸部リンパ節腫脹を認めた場合は川崎病も念頭に置き注意深く経過観察する必要がある.

2016/06/23 18:00〜18:36 P22群

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