第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【はじめに】川崎病は頸部リンパ節腫脹を主症状とする原因不明の血管炎であり,しばしば化膿性病変との鑑別が必要となることがある.今回我々は喉頭浮腫をきたし,化膿性リンパ節炎との鑑別に難渋した川崎病の1例を経験したので報告する.
【症例】7歳,女児.2015年12月某日(第-1病日)に右頸部痛が出現した.その2日後(第1病日)に咽頭痛と38°C台の発熱が出現し,近医耳鼻咽喉科で抗生剤を処方されたが改善なく,第2病日に当科紹介となった.右頸部に多数のリンパ節腫脹(最大33 mm)と周囲の発赤を認め,喉頭蓋右側・右披裂部の腫脹もみられ,右化膿性リンパ節炎の診断で抗生剤投与を開始した.造影CTで膿瘍形成は認めなかった.症状増悪したため第3病日に頸部を切開したが,排膿は認めなかった.喉頭浮腫はステロイド投与にて改善を認めた.第5病日にイチゴ舌,体幹の発疹,心エコーにて冠動脈輝度の上昇を認め,川崎病の診断でγグロブリン,アスピリン投与を開始した.症状は速やかに改善し,第14病日に退院した.
【考察】川崎病は発熱,眼球結膜の充血,イチゴ舌,不定形発疹,硬性浮腫,頸部リンパ節炎といった多様な症状を呈する疾患である.治療開始が遅れると冠動脈瘤を形成するリスクがあり,迅速な診断・治療が求められる.本症例では初発症状が発熱と頸部リンパ節腫脹のみであり,頸部の炎症による喉頭浮腫も伴ったため化膿性リンパ節炎との鑑別に難渋した.小児の頸部リンパ節腫脹を認めた際には川崎病の可能性を念頭に置き,小児科と連携を取りながら診断・治療を行うことが重要である.

2016/06/23 18:00〜18:36 P22群

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