第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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近年,手術手技の進歩に伴い内視鏡下鼻内副鼻腔手術の適応は拡大し,頭蓋底疾患では一部の悪性腫瘍に対する有用性が注目されている.嗅上皮から発生する鼻腔悪性腫瘍である嗅神経芽細胞腫に対して経鼻内視鏡頭蓋底手術で切除した報告が近年散見されるようになり,外切開による手術と比較した利点を示す報告も存在する.今回われわれは経鼻内視鏡頭蓋底手術で切除し得た嗅神経芽細胞腫の1例を経験したため,若干の文献的考察を含めて報告する.
症例は60歳台女性.数年前から増悪と軽快を繰り返す後鼻漏を主訴として近医受診し,右鼻腔内に易出血性の腫瘍を指摘され当科紹介受診となった.視診上は右嗅裂に赤色の腫瘤を認めた.CTでは,右上鼻道から嗅裂に淡い造影効果を伴う軟部陰影を認め,僅かではあるが篩板の骨欠損像を認めた.MRIで腫瘤は,T2強調画像で高信号を示し,ガドリニウム造影で高い造影効果を認めた.生検でolfactory neuroblastomaと診断され,PET-CTで頸部リンパ節転移,遠隔転移は認めず,ほぼ鼻腔内に限局するも篩板の骨欠損を認めたことからKadish分類Group C,Dulguerov分類cT2N0M0の診断で手術を行った.手術は全身麻酔下に,鼻内視鏡とナビゲーションシステムを併用して行った.まず腫瘍を減量して腫瘍基部を明視下に置き,右側篩板の骨削開を行った.術中に腫瘍の硬膜浸潤があることが確認されたため,前頭蓋底硬膜の合併切除を行った.最終的に右嗅球断端,硬膜断端を迅速病理に提出し腫瘍浸潤がないことを確認した.頭蓋底は大腿筋膜を硬膜欠損部の頭蓋骨と硬膜の間に挟んでフィブリン糊で固定し,さらに有茎鼻中隔粘膜弁で被覆して再建した.術後の病理組織診でも腫瘍硬膜への浸潤を認め,術後診断はpT3N0M0となった.術後放射線照射を勧めたが本人の拒否により厳重な経過観察としている.術後1年を経過し,再発なく経過良好であるが,長期的な経過観察が必要である.

2016/06/23 17:30〜18:00 P21群

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