第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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嗅神経芽細胞腫は嗅粘膜上皮から発生する比較的稀な悪性腫瘍である.手術による腫瘍の完全摘出と放射線治療の併用療法が5年生存率や局所制御率の高さから標準的な治療法と考えられている.近年,早期症例に対しては外切開手術ではなく,経鼻的内視鏡手術により治療したという報告が増加してきている.侵襲が少ない経鼻的手術の報告が増える一方で,嗅神経芽細胞腫は高い再発率や転移率が知られている.今回,経鼻的内視鏡手術と術後放射線治療を施行した5年後に局所再発を呈した症例に対して,経鼻および経頭蓋手術の併用によって安全かつ短時間に腫瘍摘出術を行えたので報告する.
症例は54歳女性で,2010年にKadish分類でGroup A,Dulguerov and Calcaterra病期分類でT2の嗅神経芽細胞腫と診断し,経鼻的内視鏡下での摘出術と術後放射線治療を施行した.経過良好であったが,5年後のMRI検査にて鼻腔から頭蓋内に再発と思われる腫瘍性病変を認めた.頭蓋内病変が前頭葉へも浸潤していたため,経鼻手術と開頭手術を併用して腫瘍摘出を行った.手術は鼻腔より左右の前頭洞を開放して交通させ(Draf type III),両側の篩骨洞,蝶形骨洞を開放して前頭蓋底を明視下に置き,並行して脳外科医により前頭開頭が行われた.腫瘍および浸潤が見られた硬膜を経鼻と経頭蓋双方向から摘出し,腹直筋膜と脂肪組織で頭蓋底再建を行った.手術時間は4時間54分で,出血量は109 mlであった.感染や髄液漏などの合併症を生じることなく,術後11日で退院した.
嗅神経芽細胞腫は,局所再発や全身転移までの期間が長い疾患であるため,今後も10年以上の経過観察が必要と考えている.

2016/06/23 17:30〜18:00 P21群

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