第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

プログラム

No

タイトル

浸潤型副鼻腔真菌症は糖尿病や悪性腫瘍患者,高齢者に多くみられることから免疫力低下などによる日和見感染的な因子が考えられ,眼窩や頭蓋内へ進展し致命的となることも稀ではない.過去20年間に当科で加療を行った浸潤型副鼻腔真菌症10症例について臨床的検討を行うとともに,最近経験した症例のなかで鼻内視鏡下に生検を行うも診断がつかず最終的に頭蓋底手術により診断がついた浸潤型蝶形骨洞真菌症症例と悪性リンパ腫の加療中に発症した浸潤型蝶形骨洞真菌症から眼窩尖端症候群を来した症例について報告する.
症例1は68歳女性.濾胞性リンパ腫にて化学療法が行われ完全寛解の状態で経過観察中であった.2週間前から視力低下を主訴に当院内科より当科へ紹介となった.CTで右視神経管部分の骨欠損を認め,MRIでSTIR画像にて骨欠損部の粘膜の信号強度は周囲粘膜より低下しており同部位のみ造影効果が高く,画像診断から浸潤型真菌症が疑われ抗真菌薬の投与を開始した.鼻内視鏡下に観察すると同部位には肉芽様の組織が存在しているだけで視診上は真菌塊を認めず,周囲の粘膜も正常であった.視神経周囲まで肉芽組織を除去し病理組織診断へ提出するも炎症所見のみで真菌は証明できなかった.最終的に水頭症を発症し,当院脳神経外科にて頭蓋底手術が行われ浸潤型真菌症と診断された.
症例2は63歳男性.びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫にて化学療法中であった.2ヵ月前から頭痛を認めていたが画像所見にて異常を認めなかった.治療経過中突然左眼が見えなくなり眼科受診にて光覚弁の状態であり,CTで左蝶形骨洞の陰影と眼窩先端部骨壁の欠損を認め,当科紹介となり緊急手術を行った.内視鏡下に蝶形骨洞を開放すると膿性貯留物と浮腫状粘膜を認め,病理組織にて炎症細胞浸潤を伴ったアスペルギルスとの診断であった.抗真菌薬を投与するも悪性リンパ腫の病状進行とともに全身状態も悪化した.

2016/06/23 18:06〜18:30 P20群

操作