第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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鼻・副鼻腔における真菌症は周囲組織に浸潤しない非侵襲性のものと周囲組織に浸潤を示す侵襲性のものに大別される.侵襲性副鼻腔真菌症は眼窩内・頭蓋内への浸潤により時に致死的となる疾患である.侵襲性副鼻腔真菌症に対する治療法は手術による病変組織の徹底的な除去,加えて抗真菌薬の投与が原則である.しかし大きく安全域を設けることが難しい副鼻腔領域では,手術で真菌を完全に除去することが困難であり,その予後は不良であった.だが近年アスペルギルスを含む真菌属に対して感受性が強く副作用が少ない抗真菌薬の出現により,侵襲性副鼻腔真菌症に対しても多く使用され,その予後は改善傾向にある.今回われわれは,当科において加療を行った侵襲性副鼻腔真菌症例について若干の文献的考察を加え報告する.
対象は2008年から2015年の間に北海道大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科にて加療を行った侵襲性副鼻腔真菌症5例である.年齢は69歳から88歳,男性1例,女性4例であり,基礎疾患がなかった症例は1例,他の4例には肺結核,悪性リンパ腫,狭心症,左副腎腺腫摘出後副腎機能低下症のためステロイド内服,といった併存疾患を認めた.発生部位は上顎洞が3例,蝶形洞が2例であった.5例全例に抗真菌薬の全身投与および外科的治療を行った.抗真菌薬は5例全例にボリコナゾール(そのうち1例はアムホテリシンBとミカファンギンも併用)を投与した.術後3ヵ月から7年(中央値2年6ヵ月)経過をみており,5例中1例は現在入院加療中,1例は再発するも手術を希望されずボリコナゾール内服にて経過観察,3例はボリコナゾール内服継続のうえ明らかな再発なく経過観察中である.

2016/06/23 18:06〜18:30 P20群

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