第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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浸潤性副鼻腔真菌症は骨破壊や病変の眼窩内や頭蓋内浸潤により重症化し,予後不良な疾患である.今回,眼球摘出せずに寛解に至った浸潤性上顎洞アスペルギルス症の1例を経験したので報告する.
【症例】67歳女性.
【現病歴】8年前初発の濾胞性リンパ腫に対して治療歴があり汎血球減少を認めている患者.X年3月頃から左眼位の異常を自覚し,4月に施行されたMRIで左上顎洞後壁を破壊し側頭下窩に進展する病変を認め,精査加療のため入院となった.易感染性の患者背景,β-Dグルカン上昇などの血清学的データ,画像所見などから真菌症を疑い,生検のために入院後第3病日に内視鏡下鼻副鼻腔手術を施行した.病理診断で浸潤性真菌症(Aspergillus fumigatus)の診断.側頭下窩へは進展していたが眼窩骨膜は保たれていたため第6病日に側鼻切開を上口唇まで延長した外切開のうえ,側頭下窩へ到達,内視鏡を併用しデブリードメントを施行した.術後は洗浄や吸引管での掻爬などの局所処置を継続し,第34病日に施行したCTで明らかな病変を認めず退院となった.以降外来にて経過観察中であるがあきらかな再発所見を認めていない.
【考察】浸潤性副鼻腔真菌症は,基礎疾患の是正・抗真菌薬投与・外科的処置を含めた集学的治療を要するとされる.近年,新規の抗真菌薬の開発が進んできているが,抗真菌薬単独での治療は困難とされ手術による病変の徹底的な除去が基本とされている.術式については定まった見解がなく,個々の症例に応じ判断するしかない現状がある.今回眼球摘出を含めた拡大手術をせずに寛解状態を維持できた症例を経験したので若干の文献学的考察を加え報告する.

2016/06/23 18:06〜18:30 P20群

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