第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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鼻性頭蓋内合併症の発症要因は自然発症,術後発症,外傷後発症に分類されるが,近年,自然発症が多数を占めている.原因となる副鼻腔は前頭洞,蝶形洞,篩骨洞,上顎洞の順に多い.蝶形骨洞が原因の場合は髄膜炎,海綿静脈洞血栓症を来しやすいが,気脳症を伴った髄膜炎症例の報告は少ない.今回我々は蝶形骨洞炎から気脳症を伴った細菌性髄膜炎を発症した1症例を経験したので報告する.
症例は33歳の女性.約1ヵ月前より膿性鼻汁を認めていた.頭痛が出現したため,近医受診.同院の血液検査でWBC 21900/μL,CRP 13.8 mg/dLと炎症反応があり,頭部CTでは気脳症が認められた.髄液検査の結果は,初圧320 mmHg,性状は淡黄色で不透明,細胞数5232/3(多核球55%,単核球45%),タンパク218 mg/dL,糖33 mg/dLであり,細菌性髄膜炎と診断され同院にて入院加療となった.髄液塗抹検査でグラム陽性球菌が検出され,セフトリアキソン(CTRX),バンコマイシンで加療が開始された.その後原因菌が肺炎球菌と分かり,CTRX単独治療に切り変えた.手術による治療が必要となる可能性から当科転院となった.右嗅裂に膿が付着していたが,神経学的異常所見はなかった.頭部MRIでは蝶形骨洞後面周囲の髄膜の一部テント下を中心にわずかなクモ膜軟膜の造影効果を認め,髄膜炎に合致する所見であった.当科入院後CTRX点滴治療を継続したが,頭痛症状とCTでの右蝶形骨洞炎の改善がなかったため,ESSにて右蝶形骨洞を開放し,排膿を行った.術後速やかに頭痛は消失し,血液検査での炎症反応も改善したため,術後6日目に退院した.
副鼻腔炎から気脳症を伴う髄膜炎を来した症例に対する適切な対応を含め文献的に考察し,報告する.

2016/06/23 18:00〜18:36 P18群

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