第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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ビスフォスフォネート製剤は,固形癌の骨転移や骨粗鬆症等の骨代謝疾患の治療に広く用いられている.一方,国内外において本剤投与中の患者に顎骨壊死の症例が多くの施設から報告されている.今回,乳がん治療中の骨粗鬆症の加療でビスフォスフォネートの内服を行い,上顎下顎骨髄炎を来したと考えられ,長期経過にて蝶形骨まで骨髄炎が進行した症例を経験したため報告する.
症例は56歳女性.X-5年7月に近医歯科にて右上顎洞骨壊死を指摘され,処置を行っていた.乳がんの加療にてビスフォスフォネート製剤を3年以上の間,長期内服していた.内服を中止し処置を行うも改善なく,X-4年3月当院歯科口腔外科紹介.Stage2と判断され洗浄,抗生剤の投与による加療が行われた.壊死範囲の増大を認め,X-1年2月に両上顎腐骨除去術,下顎区域切除が行われた.併存症として,上顎洞篩骨洞炎を認め,近医にて洗浄処置が行われた.X年6月に視力障害を主訴に当科受診した.右上顎骨篩骨蝶形骨に骨壊死像を認め,視力は失明の状態であった.同日上顎洞篩骨洞手術を行い視力はいったん改善したが,9月に再度失明を来した.再手術を行ったが,一過性に指数弁まで回復するも再度失明状態となった.右の眼窩壁は篩骨,蝶形骨に骨破壊を認めた.
ビスフォスフォネート製剤による骨髄炎は一般的に顎骨に生じるとされる.本症例の様に蝶形骨まで炎症が波及した症例の報告は,本邦では我々が渉猟した範囲では認めなかった.本症例について若干の文献的考察を加え報告する.

2016/06/23 18:00〜18:36 P18群

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