第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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鼻性視神経症は副鼻腔炎,鼻腔囊胞などにより視神経の障害を来す疾患で,視力障害が不可逆的になる前に緊急手術を要する疾患の1つである.視力障害の予後は治療開始までの時間や視神経の圧迫と炎症の波及が関与するといわれ,炎症による視力低下の予後は不良といわれている.今回私たちは,視力低下から2週間以上経過し,手術で視力が回復した蝶形骨洞真菌症の2例を経験したので報告する.
症例1は83歳男性.左眼の視力低下を主訴に近医眼科を受診し,MRIで鼻性視神経症を指摘され当科を紹介受診した.視力は光覚程度と低下を来し,マリオット盲点の拡大を認めた.また,左眼瞼下垂を認め視神経・動眼神経への炎症の波及を疑わせた.採血では白血球とCRPの上昇を認め,CTでは軟部組織内に高吸収域を認め,眼窩壁の骨破壊も認めた.同日緊急手術を行い,左視神経周囲に貯留していた菌塊と膿を洗浄し開放した.術後翌日より視力の改善を認め,罹患前と同程度まで改善した.
症例2は54歳女性.2ヵ月前に左蝶形骨洞炎のため頭痛と髄膜炎を来し治療歴があった.右眼の視力低下と頭痛,全身倦怠感のため総合病院内科を受診し,頭部CTにて両蝶形骨洞に軟部陰影を認め,鼻性視神経を疑われて当科を紹介受診した.来院の右眼視力は光覚程度に低下しており,眼球運動の上転不全も認め動眼神経への炎症波及が疑われた.採血では炎症所見を認め,同日緊急手術を行った.左蝶形骨洞内には菌塊を認めたが明らかな炎症所見に乏しい一方,右蝶形骨洞は膿の貯留と粘膜の腫脹と易出血性を認め強い炎症を疑わせた.手術直後から視力の回復を認め,自覚的・他覚的に罹患前と同程度の改善を認めた.
2例とも術後病理でアスペルギルスの診断であり,蝶形骨洞真菌症による鼻性視神経症と診断した.蝶形骨洞真菌症などによる視神経障害を認めた場合,早急な蝶形骨洞開放による減圧が視力の改善に繋がることが示唆された.

2016/06/23 18:00〜18:36 P18群

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