第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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症例は48歳女性.27年前に下垂体腺腫(プロラクチノーマ)に対してHardy手術を施行された既往がある.X年7月初旬に両眼の奥の痛みのため当院眼科を受診.視神経炎と診断されステロイド治療を行っていた.9月より右視力低下があり,画像検査等を含め精査.視神経には異常所見を認めなかったが,蝶形骨洞炎の所見があり耳鼻咽喉科紹介となった.鼻内所見では喉頭ファイバーで観察したところ,右蝶形洞自然孔付近に透明のプレートと考えられる異物を認めた.また,副鼻腔CTでは鼻中隔後方,蝶形骨洞付近に高吸収領域を認めた.MRIではT1 high T2 high内部lowであり真菌の可能性も考えられた.採血上はβ-Dグルカンは陰性であった.眼科的所見としては,眼底に異常はなく,HESSで右軽度外転神経麻痺があり,また視野検査では視野欠損はなかったが,びまん性に視神経の感度が低下していた.蝶形骨洞炎と症状との関与が疑われたため,両側内視鏡下副鼻腔開放術を施行した.術中,下垂体手術時に留置したと考えられるシリコンプレートが蝶形骨洞自然孔近傍にあったため,摘出した.蝶形骨洞前壁をドリルで削開すると排膿を認めた.術後細菌検査では明らかな起因菌は同定できなかった.その後の経過では徐々に視力・視神経の感度も回復を認めた.
今回,下垂体手術時のシリコンプレートが蝶形骨洞へ逸脱したことによって副鼻腔炎を起こすきっかけとなったと考えられる.その炎症が周囲に波及したものと考えた.今までシリコンプレートは感染源にはなりにくく安全なものと考えられていたが,今回はその関与が疑われた.27年の時を経て,シリコンプレートが蝶形骨洞炎の原因となったと考えられた症例を経験したため報告する.

2016/06/23 18:00〜18:36 P18群

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