第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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上咽頭癌は放射線化学療法が治療の中心となるが,唾液分泌障害や味覚障害,難聴などの一般的な有害事象以外に,晩期障害として内頸動脈仮性動脈瘤を形成することがある.動脈瘤の破裂は致死的であり,早期の診断と対応が重要となる.
症例は57歳男性(職業:内科医師).既往歴として約20年前に上咽頭癌に対する放射線化学療法治療,約10年前に左外耳道癌に対するサイバーナイフ治療歴があった. 右耳,右鼻からの多量出血のため当院に救急搬送されたが,当院到着時には止血が得られ,また貧血の程度も軽度であったことからそのまま一旦帰宅となっていた.その2日後,再度多量出血で救急搬送された際には,貧血の進行を認め,入院となった.当初は慢性中耳炎,外耳炎に伴う壊死組織あるいは上咽頭癌再発からの出血を疑ったが,右外耳道は炎症性の肉芽で閉塞しており,上咽頭には少量の血液付着以外に腫瘤を認めなかった.出血源特定のため早期に3D-angio CTを行ったことで内頸動脈仮性動脈瘤の破裂であることが判明した.その後,脳神経外科により血管造影とコイル塞栓術による治療を行い,脳梗塞の後遺症を残しながらも救命しえた.
上咽頭癌は東南アジア諸国に多く,日本では比較的少ないが同様の症例報告は本邦でも認められる.その中には本症例と同様に治療後5年以上を経過して耳鼻出血で発症しているものが報告されており,今後の診療においても重要な晩期合併症として覚えておく必要がある.
上咽頭癌の解剖学的特徴を踏まえ,治療に際しての合併症について国内外の放射線治療後の内頸動脈仮性動脈瘤破裂症例に関する文献をまとめて考察し,報告する.

2016/06/23 18:00〜18:36 P18群

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