【はじめに】軟骨様汗管腫瘍(Chondroid syringoma:以下CSと略す)は1892年にNasseにより初めて報告された汗腺系腫瘍に属する皮膚付属器腫瘍であり,全皮膚腫瘍に占める割合は0.01~0.098%と比較的まれとされている.今回,われわれは鼻腔内に発生したCSの1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
【症例】50歳,男性.
【主訴】右外鼻孔腫瘤.
【現病歴】約半年前から右外鼻孔に腫瘤を自覚.増大傾向があったため近医を受診し当科紹介となった.
【初診時所見】腫瘤は表面整で灰白色・弾性硬,基部は鼻前庭下壁から外側壁にかけて広基性に存在した.腫瘤の可動性は良好で,CT所見で深部への浸潤は認めなかった.良性腫瘍の可能性が高いと判断し,組織の確認もかねて全身麻酔下に摘出手術施行した.
【術中所見】表皮と癒着のない皮下腫瘤は丈夫な被膜に包まれており,周囲皮下組織との癒着もなく容易に一部表皮もつけて被膜ごと摘出できた.迅速病理組織診断では皮膚付属器腫瘍との診断で良悪性の判断は困難とのことであったが,永久病理組織診で軟骨様汗管腫・悪性所見は認めないとのことであった.術後経過は良好で現在再発を認めていない.
【考察】多様な組織が混在した構造が特徴であるCSは術前診断が困難であるが,治療は摘出が基本であるとされている.かなりまれに悪性化の報告もありやや広範な摘出が必要とする向きもあるが,今回の症例の場合,摘出範囲の拡大は外鼻の変形のリスクも伴うので永久病理組織診で悪性所見があった場合のみ追加切除を考慮するのが妥当であろうと考えた.
2016/06/23 17:30〜18:00 P17群