第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

プログラム

No

タイトル

鼻腔乳頭腫は鼻腔粘膜から発生する良性の腫瘍で,鼻腔腫瘍の0.5~4%を占めるとされている.病理組織学的にinverted型,exophytic型,oncocytic型の3タイプに分類されており,inverted型とexophytic型がその大半を占める.また,癌化においては,inverted型とoncocytic型で起こることが一般的で,exophytic型では稀とされており,これまでに2例のみの報告である.今回我々は,外来生検にて異常角化を伴うexophytic papilloma疑いの左鼻腔腫瘍に対し,内視鏡下に腫瘍を摘出した結果,乳頭腫に発生した扁平上皮癌の診断に至った1例を経験したので報告する.
症例は50歳女性.左鼻腔腫瘍に対する精査・加療目的で他院より紹介受診となった.術前画像検査では造影CTにてやや造影効果を伴う腫瘤が左鼻腔後方を占拠しており,MRI上,腫瘍基部は下鼻甲介後方あるいは鼻中隔にあることが予測されたが,同定することは困難であった.治療は鼻内視鏡下に腫瘍を摘出した.結果的にvidian artery周辺の骨膜と連続性があり,そこが基部と考えられたため,鼻中隔側からも骨膜を剥離し,十分なマージンを確保して基部に集約し摘出した.分割切除となっているが,永久病理組織診断にて全摘出されていることが確認できた.現在,術後3ヵ月であるが再発なく経過している.
また,2007年~2015年に当院で加療した鼻腔乳頭腫に関して,術式,病理組織型,癌化について検討した.症例は男性6例,女性4例(うち再発1例)の計10例で,内視鏡下に切除したのが7例,lateral rhinotomyで切除したのが1例,Caldwell-Lucにて切除したのが2例であった.組織型はinverted型が8例,exophytic型が2例で,うち癌化を認めたのは今回報告する症例のみであった.これまでの報告も併せてexophytic型の悪性化はやはり稀であるが,どの組織型であっても乳頭腫例に対しては手術における完全摘出が重要であると考えられた.

2016/06/23 17:30〜18:00 P17群

操作