第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【はじめに】好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)はアレルギー性鼻炎もしくは気管支喘息,好酸球増多,全身の血管炎による症状を主要徴候とした血管炎症候群の一つである.今回はEGPAの治療,経過観察中に鼻腔および中耳腫瘍を疑う所見から切除手術を行い,EGPAに伴う血管外肉芽腫と診断された1例について報告する.
【症例】55歳女性.主訴は左鼻閉.X-14年に気管支喘息,X-13年にEGPAと診断されプレドニンを内服中.X-1年12月頃から左鼻閉があり近医を受診.左鼻腔腫瘤を指摘され,X年3月に当科紹介となった.左中鼻道から総鼻道にかけて易出血性の腫瘤を認めた.副鼻腔CTでは左鼻腔を占拠する軟組織陰影を認め,MRIで同部位はT1で低信号,T2では内部不均一で低から高信号域を呈した.同年6月に内視鏡下に腫瘍切除術を行った.組織学的には腫瘍性病変はなく,好酸球を含めた白血球浸潤を伴う炎症所見であった.再発所見なく外来で経過観察中,X+1年9月より左耳の耳閉感が出現し,左鼓膜の後上方の膨瘤と中耳貯留液を認めた.聴器CTでは中鼓室に軟組織陰影を認めた.中耳腫瘍を疑いX+2年7月に左試験的鼓室開放術を行った.生検の病理結果では腫瘍性病変は認めなかった.その後同年11月に腫瘍摘出術を行った.白色で硬い腫瘍が中鼓室に充満し,ツチ骨柄およびキヌタ骨長脚,アブミ骨周囲に肉芽を認めた.病理結果は好酸球を含めた高度な炎症細胞浸潤を伴う巨細胞性肉芽腫で,EGPAに関連する血管外肉芽腫に矛盾しない所見であった.
【考察】EGPAは好酸球浸潤を伴う全身性血管炎であるため,初期には好酸球性副鼻腔炎や好酸球性中耳炎と鑑別が困難なこともあるが,腫瘍に類似した病変を伴うことは稀である.ステロイド投与により寛解導入された後に耳鼻咽喉科領域の肉芽腫性病変の存在から再燃に気づくこともあり注意深い経過観察が必要であると考えられた.

2016/06/23 17:30〜18:00 P17群

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