第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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全身の血管周皮細胞に由来する間葉系腫瘍である血管周皮腫のなかで,鼻副鼻腔に発生するものは他の部位とは臨床像・組織所見が異なるため,2005年に改訂されたWHO分類のなかでglomangiopericytomaという独立した疾患概念として区別された.glomangiopericytomaの発生頻度は,全鼻副鼻腔腫瘍の0.5%未満であり,非常にまれな腫瘍である.外科的切除が治療の基本であり,術後の5年生存率は約90%と比較的予後良好である.しかし腫瘍の血流が豊富なため,生検時や手術時に大量出血をきたす恐れがあり十分留意する必要がある.
今回我々は,右鼻腔に発生したglomangiopericytomaの1症例を経験した.当科受診時,右嗅裂に暗赤色の易出血性腫瘤を認め,画像上も中鼻甲介内側から後部篩骨蜂巣,および一部蝶形骨洞前壁にかけて造影効果のある腫瘍が認められた.外来での腫瘍生検にてglomangiopericytomaが疑われた.生検時の止血に難渋したため,術前に血管造影検査を施行した.その結果,腫瘍は右蝶口蓋動脈の外側枝のみを栄養血管としていることが判明し,右蝶口蓋動脈の塞栓術を施行した.翌日内視鏡下に腫瘍摘出術を施行,腫瘍は鼻中隔後方に茎を有しており,十分な安全域を確保しての摘出が可能であった.術中出血量は25 mlであった.病理検査では,紡錘形細胞の増殖を主体とし,血管が豊富でいわゆるstaghorn vascular patternを呈していた.免疫組織染色ではvimentin陽性,α-smooth muscle actin陽性,CD34陰性であり,glomangiopericytomaと診断された.切除断端は陰性であった.現在術後約7ヵ月を経過したが,再発を認めていない.

2016/06/23 17:30〜18:00 P17群

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