第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【はじめに】鼻副鼻腔腫瘍の術前病理診断は困難な場合があり,しばしばそれに伴う治療方針決定に難渋することがある.今回我々は,術前に鼻腔デスモイド型線維腫症と診断された紡錘形細胞型横紋筋肉腫症例を経験したので報告する.
【症例】62歳女性.2010年に鼻出血で近医を受診し左鼻腔腫瘍を指摘.局所麻酔下生検では診断がつかず,全身麻酔下に可及的腫瘍摘出術施行し,デスモイド型線維腫症の診断であった.その後,通院を自己中断していたが,2015年に再度鼻出血を認め受診.腫瘍増大がみられたため加療目的に紹介となった.鼻内は左中鼻道に赤色腫瘤性病変を認め深部観察は困難であった.造影CTでは左篩骨洞から前頭洞に造影効果を伴う腫瘤を,左上顎洞,蝶形骨洞には二次性副鼻腔炎を疑う軟部陰影を認めた.左眼窩内側壁と頭蓋底の一部で骨欠損が疑われた.MRIでは,腫瘍はT1で等信号,T2で高~低信号が混在し,造影でやや不均一に造影された.経過から左鼻腔デスモイド型線維腫症と判断し,内視鏡下腫瘍摘出術を施行した.術中迅速診断でも同様の病理所見であり,EMLP,EMMMアプローチを用い,断端病理を確認しながら肉眼的に腫瘍を全摘出した.頭蓋底骨欠損部は有茎鼻中隔粘膜弁で保護した.術中髄液漏はなく,術後の視力障害や複視も見られなかった.出血は700 mlであった.術後経過良好で術後8日目に退院となったが,免疫組織化学診断を加えて退院後に報告された病理診断は紡錘形細胞型横紋筋肉腫であり,現在化学療法を検討している.
【考察】鼻副鼻腔腫瘍は希少かつ組織学的に多彩であり,術前,術中,術後で病理診断が異なることをしばしば経験する.そのために治療に不利益がもたらされることや,治療方針の変更を余儀なくされることも時に経験する.当科で過去に経験した同様の症例を含めて考察する.

2016/06/23 17:30〜18:00 P17群

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