第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【はじめに】奇形癌肉腫(teratocarcinosarcoma)は早期に周囲軟部組織,眼窩や頭蓋内へ浸潤する,極めて稀な高悪性度腫瘍である.治療は外科的切除が第一選択であるが,完全切除が困難な場合も多く,切除後の再発率も高い.今回我々は,頭蓋内に進展した副鼻腔奇形癌肉腫(sinonasal teratocarcinosarcoma)の1例を経験したので報告する.
【症例】66歳男性.
【主訴】嗅覚脱失.
【臨床経過】8ヵ月前からの嗅覚脱失を主訴に近医耳鼻咽喉科を受診,鼻腔腫瘍にて当科紹介となった.問診にて左霧視,左方視時の複視も認めた.中鼻道に乳白色の腫瘤があり,CTおよびMRIにて左篩骨洞を中心として鼻腔内,上顎洞,蝶形骨洞,眼窩内,頭蓋内に浸潤する腫瘍を認めた.鼻腔悪性腫瘍を疑い,同部位から生検施行した.HE染色では乳頭状に増殖する異型細胞と紡錘型異型細胞を認め,免疫染色もあわせると鼻腔扁平上皮癌または嗅神経芽細胞腫を考える所見であったが,確定診断には至らなかった.また,PET-CTで原発巣にSUV max 8の集積を認めたが,頸部リンパ節や遠隔転移には集積を認めなかった.生検検体ではこれ以上の診断は困難であり,また鼻腔扁平上皮癌,嗅神経芽細胞腫のいずれであっても手術治療が必要であると判断し,前頭蓋底手術を行った.摘出標本から奇形癌肉腫と診断した.組織型が高悪性度であり,術後はシスプラチンを併用した化学放射線治療を行った.術後8ヵ月,明らかな再発や転移は認めていない.

2016/06/23 18:00〜18:30 P16群

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