第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【諸言】耳鼻咽喉科領域においてコレステリン肉芽腫は主に中耳に発症すると報告されているが,鼻副鼻腔内に発生したコレステリン肉芽腫は報告が少なく,発生機序も未だに不明な点が多い.今回,我々は止血困難な出血性腫瘍が疑われた上顎洞コレステリン肉芽腫を経験したため,若干の文献的考察を交えて報告する.
【症例】症例は66歳男性.5年前に右副鼻腔ポリープの診断で右鼻内内視鏡手術の既往あり.当時の病理結果はコレステリン肉芽腫とのことであった.20XX年に右鼻出血を主訴に近医を受診し,右上顎洞内より暗赤色の腫瘤を認め,出血性腫瘍の疑いで紹介受診となった.CTで右上顎洞内に淡い高信号域を有する不均一な軟部陰影を認めた.MRIではT1強調で低信号,T2強調で高信号な浮腫状粘膜の所見のなかに,一部T1高信号,T2低信号の血腫を疑わせる部分が混在していた.その後も連日出血を認めるため,止血目的,診断的治療目的に右鼻内内視鏡手術を予定した.術中の内視鏡で右上顎洞後壁から下壁にかけてびらんと血腫を有する浮腫状粘膜を認め,3ヵ所迅速病理に提出するも診断がつかなかった.やむなく歯齦部切開を加え,上顎洞前壁に小さく開窓し,上顎洞内の炎症性肉芽を全掻爬した.永久病理診断で上皮下にコレステリン間隙を多数有する肉芽所見を認め,コレステリン肉芽腫の診断となった.その後は出血を認めず,鼻内所見でもコレステリン肉芽腫症の再発を認めていない.
【考察】耳鼻咽喉科領域ではコレステリン肉芽腫は中耳発症の報告が多い.機序として,何らかの出血から血漿成分のコレステリンが結晶化し,結晶に対する異物反応により結晶を中心とした炎症性肉芽が形成されるものと考えられている.かつては鼻副鼻腔発症の報告も散見されたが,2000年代からは報告が減少している.その要因として,副鼻腔炎の治療法の変化が関与していると推察された.

2016/06/23 18:00〜18:30 P16群

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