第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【はじめに】孤立性線維性腫瘍(solitary fibrous tumor:SFT)は,線維芽細胞に相当する分化を示す紡錘形間葉細胞から構成される腫瘍で,主に胸膜などの漿膜表面に発生する.鼻副鼻腔領域での報告はあるが,鼻前庭に発生したSFTの報告は非常に少ない.WHOの分類では鼻・副鼻腔に発生する胸膜外孤立性線維性腫瘍は境界型悪性腫瘍に分類されており,再発・転移の可能性があるとされている.今回我々は,鼻前庭に発生したSFTの1例を経験したので報告する.
【症例】72歳男性.主訴は右鼻腔入口部腫脹.X-2年頃から右鼻腔入口部の腫瘤を自覚していた.徐々に増大してきたため,X年5月当科紹介受診となった.初診時所見は右鼻前庭に弾性硬,圧痛のない腫瘤を触知した.単純CTでは右鼻前庭に直径17×16 mm,境界明瞭で内部均一な腫瘤を認めた.6月に全身麻酔下にて歯齦部切開を行い,右鼻前庭腫瘤摘出術を行った.摘出標本は球状,表面平滑,弾性硬であった.腫瘍は内部均一で白色の充実性であった.病理結果は淡明な核を有し,核小体明瞭な紡錘形細胞あるいは卵円形細胞が,一部に厚い膠原線維を介し,間質の硝子化を伴ってpatternless patternに増殖する像からなり,staghorn-like vesselを思わせる像も一部に認めた.免疫組織学的検査でCD34陽性であり,SFTと診断された.現在術後6ヵ月経過するが,再発は認めていない.
【まとめ】鼻前庭に発生した稀なSFTの1例を報告した.手術により完全摘出できたが,鼻副鼻腔のSFTは再発,転移の報告は稀にあり,今後も慎重な経過観察が必要である.

2016/06/23 17:30〜18:00 P15群

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