第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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悪性末梢神経鞘腫(MPNST)はシュワン細胞由来の腫瘍である.多くは体幹や四肢に発生し,鼻副鼻腔領域に発生することはまれな疾患である.今回われわれは,上顎洞に発生し,急激に進行した悪性末梢神経鞘腫の1例を経験したので報告する.
症例は33歳,男性.29歳時にNeurofibromatosis-1(NF-1)の診断を受けている.初診日の1ヵ月ほど前から左鼻閉を自覚.左頬部と目の奥の痛みも出現したため近医耳鼻咽喉科を受診.レントゲン検査にて急性副鼻腔炎を疑い保存治療を行ったが改善なく当科紹介となった.画像検査にて悪性腫瘍を疑う所見であり,上顎洞腫瘍の生検を行ったところMPNSTの診断となった.その後腫瘍は急速に増大し眼窩内浸潤も認められたために,初診日より2ヵ月後に左拡大上顎全摘術を行った.そのわずか2週間後より左鼻中隔に腫瘤が出現し急速に増大.生検にてMPNSTと診断され,口蓋の追加切除と鼻中隔の全摘を含めた腫瘍摘出術を行った.さらにその10日後には上顎全摘後の外側後方に腫瘤が出現し急速に増大.生検にてMPNSTの再発と診断されたが,画像診断にて根治切除は困難と考えられたため化学放射線療法を行った.治療により腫瘍は縮小しないものの明らかな増大もなく,造影CTで造影効果が著しく減弱した.
MPNSTの治療については手術療法が主体であり,放射線治療や化学療法の効果は低いとされている.また手術に際しては局所再発率の高さから広範囲の切除が必要であるとされているが,鼻副鼻腔領域においては広範囲切除が困難であることもある.本症例は拡大上顎全摘術を行ったが急速な局所再発をきたし,追加切除術と化学放射線療法を行ったが局所制御困難であった.

2016/06/23 17:30〜18:00 P15群

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