第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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腫瘍性骨軟化症とは,腫瘍産生因子の影響で低リン血症が起こる腫瘍随伴症候群の一つである.今回,鼻副鼻腔原発の腫瘍性骨軟化症例を経験したので報告する.
症例は51歳女性で,2年前より右鼻腔腫瘍を認め精査目的で当科紹介となった.既往には10年前に喘息,2年前に両側特発性大腿骨頭壊死と骨粗鬆症を認め両側人工関節全置換術を受けていた.車椅子で来院され,家では歩行器を使用して何とか歩けるという程度であった.CTでは骨破壊像はなかったが右中鼻道から後部篩骨洞・嗅裂部にかけて膨張性発育を呈する一側性の軟部腫瘤を認めた.初診時に組織生検を行ったところ鼻茸を第一に考える病理組織であった.MRIでは,腫瘤はT2強調像で不均一な信号を呈し鼻中隔を圧迫または浸食しており,鼻茸や内反性乳頭腫とは異なる画像所見であった.鼻内視鏡下で腫瘍の切除生検を行ったが,出血が多く組織採取と止血に苦渋した.病理診断はmyofibromaであった.造影CT/MRIを追加で行ったところ,造影増強効果が強く血流が豊富な腫瘍と考えられた.血管造影検査を行い,右蝶口蓋動脈から腫瘍濃染像を認めた.患者は4年前より四肢の痛みと筋力低下はあったが,術前精査中にもそれらの病状は進行してほぼ寝たきりの状態となったため当院内科に入院となった.高ALP血症,低リン血症があり,骨シンチグラフィーでは全身に多数の左右対称性の異常集積を認めた.血中FGF23は高値であり,PETCTでは右鼻副鼻腔に有意なFDG集積を認め,鼻副鼻腔腫瘍によるFGF23関連低リン血症性くる病と診断された.塞栓術を行った後,鼻内視鏡下に腫瘍全摘出術を行った.その後,全身の痛みは徐々に改善し,術後1ヵ月でつかまり立ちが可能となり現在は歩行リハビリ中である.術後5日目で測定した血中FGF23とリンは正常値であった.
本症例は腫瘍摘出により全身症状が改善する非常に稀な骨軟化症であり,耳鼻咽喉科医として知っておくべき重要な疾患かと考える.

2016/06/23 17:30〜18:00 P15群

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