第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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本邦では上顎洞癌は全頭頸部癌の5%を占め,初診時には局所進行癌であることが多く組織学的には扁平上皮癌が80%を占める.また,上顎洞は上気道の一部であるとともに顔面形態に関与し,周囲に脳・視器・口腔など生活の質を維持するうえで非常に重要な構造物である.このために治療法に関しては根治性と機能維持の両面から様々な論議がなされている.今回われわれは超選択的動注化学放射線療法をおこなった後に上顎洞癌の再発を認めた症例に対し,経鼻内視鏡的に腫瘍を切除し再発なく良好の経過をたどった症例を経験したので文献的考察を加え報告する.
症例は65歳男性で主訴は左頬部痛.受診まで左鼻閉の自覚はあったが多忙のために放置していた.受診1ヵ月前に左頬部痛を自覚し,左上顎洞癌の疑いで当科へ紹介された.生検で扁平上皮癌の診断で,CT・MRIなどを併せて左上顎洞癌cT4aN0M0 Stage4Aと診断した.超選択的動注化学放射線療法を希望され,CDDP 100 mg/m2の動注を4回と66 Gyの放射線照射をおこない,いったんCRの診断で経過観察していた.しかし治療終了後6ヵ月でのフォローアップPET-CTで左上顎洞内側壁に該当する部分に局所再発を疑わせるFDGの集積を認めた.同部位から生検を施行したが明らかな再発の所見は認めなかった.FDG集積部分が限局していたこと,患者本人が拡大手術を希望されなかったことからまずは経鼻内視鏡的に術中迅速診断を用いながら癌の違残がないようにできる限り大きく切除・摘出した.術後病理組織所見では切除した組織の中心・内部に扁平上皮癌の再発を認め,断端は陰性であることが確認できた.現在術後1年が経過するが局所再発および遠隔転移は認めず経過は良好である.
超選択的動注化学放射線療法後の鼻腔内に限局した上顎洞扁平上皮癌の再発は,症例を選択すれば安全かつ低侵襲に経鼻内視鏡的に摘出可能であると思われた.

2016/06/23 18:06〜18:36 P14群

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