第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

プログラム

No

タイトル

術後性上顎囊胞の囊胞数や位置は症例によって様々である.単房性や多房性,囊胞壁が下鼻道や中鼻道に接して内側に位置するものや,外側に位置して鼻腔から離れているものなどがある.観血的治療として耳鼻咽喉科では現在鼻内法が主であるが,囊胞の位置や囊胞壁の骨の厚さから充分な開放が得られず,術後の骨造成がすすむ結果,術後の狭小化,閉鎖を招く症例もある.また,術後再閉塞は3ヵ月以内や3~6ヵ月と比較的早期に閉塞するという報告が多いが,術後の経過観察期間について一定の見解は得られていない.今回我々は術後性上顎囊胞に対し鼻内法を施行し,かつ術後の経過を観察し得た症例(男性27例,女性13例,計40例48側)に対して臨床的に検討したので報告する.
観察期間は8週から96週で平均観察期間は31.1週であった.年齢分布は41歳から81歳で平均63歳であった.検討は囊胞の位置,囊胞の数,囊胞壁の性状,術後開放部の状態,開放部が狭小化・閉鎖するまでの期間について行った.結果は,囊胞の位置は内側型36側(75.0%),外側型12側(25.0%),囊胞の数は単房性38側(79.2%),2房性9側(18.8%),3房性1側(2.0%),囊胞壁の性状は膜性37側(77.1%),骨性11側(22.9%),術後開放部の状態は開存30側(75.0%),狭小化3側(7.5%),閉鎖7側(17.5%),開放部が術後に狭小化・閉鎖するまでの期間は2週から9週であり,平均期間は6.7週であった.開放部の開存度と囊胞の諸因子について,最も有意差が見られたのは壁の性状についてであり,骨性のほうが膜性と比較して狭小化,閉鎖する症例が多かった.諸家の報告では,術後観察期間として3ヵ月程度は必要という報告が多いが,今回の検討では閉鎖に至った期間は2週から9週であり,術後観察期間は最低でも9週間は必要と考えられた.当科では現在のところ再手術症例はみられないが,閉鎖例に対してはCTなどの画像診断の検討も必要と考える.

2016/06/23 18:06〜18:36 P14群

操作