第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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丹毒(狭義)は,連鎖球菌の感染による限局性の浮腫性紅斑と腫脹を特徴とする表在性の感染症で,一般的には抗生物質の治療を実施することにより良好な治癒を認める疾患である.今回我々は,診断・治療に難渋した顔面丹毒症例を経験したので報告する.
症例は49歳,男性.既往歴にX-1年7月左鼻内視鏡手術.X年7月27日,左頬部の限局性腫脹と疼痛を主訴に当科初診.CTにて,右副鼻腔炎と左上顎洞内の粘膜肥厚と左上顎骨融解付近の皮下腫脹を認めた.この時点で,両側急性副鼻腔炎と左頬部の蜂窩織炎を疑い,CVA/ANPCを5日間内服したが改善せず.鑑別として,皮下の腫瘍性病変が否定できなかったため,左頬部皮下より針生検を実施したが,リンパ球を中心とした炎症細胞のみを検出した.穿刺液培養も陰性であった.その後GRNXを12日間内服し,いったん改善.しかし,9月上旬より左頬部腫脹が再燃.9月9日再診,皮膚発赤と硬結も著明であった.CTにて,左頬部皮下の造影効果の高い限局性病変を指摘され,針生検の結果からリンパ腫が鑑別疾患として挙がり,外来で皮膚外切開による皮下生検を実施したが,肉芽組織の診断であった.その後外来でCTRXの点滴を10日間実施したが,局所所見・炎症反応が悪化したため,9月18日より入院でTAZ/PIPCを開始.9月24日に手術室で局所麻酔下に再び外切開にて左頬部皮下組織生検を実施したが,リンパ腫は否定的で生検組織培養も陰性であった.肉芽腫性炎症として放線菌感染症が鑑別に挙がり,10月2日よりPCG点滴に変更したところ,局所症状・炎症反応ともに著明に悪化.10月5日,全身麻酔下に左犬歯窩切開で上顎洞の骨融解部付近より,生検およびデブリードメントを実施したところ,生検組織培養より,Streptococcus mitisが検出され,薬剤感受性検査で多剤耐性菌であることが判明した(その後も治療に難渋する.詳細は発表にて報告).

2016/06/23 17:30〜18:06 P13群

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