第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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鼻出血は,耳鼻咽喉科の日常診療のなかで多く経験する救急疾患のひとつである.原因が明らかではない特発性鼻出血が最も多く,かつ鼻中隔前方からの出血が8割以上とされる.前方からの鼻出血では,出血部位が確認され,外来でのガーゼパッキングによる圧迫,電気凝固による焼灼により止血されるケースが多い.しかし,5~10%の症例は,外来対応に難渋する難治性鼻出血であり,入院治療を要す.難治性鼻出血では,鼻腔後方からの出血が多いとされる.鼻腔後方は解剖学的に狭い場所であり,詳細な観察や保存的止血処置が困難な場合がある.出血部位が明視できず,また保存的治療に抵抗し出血を繰り返す症例では,手術治療または血管塞栓術が検討される.
鼻腔後方の栄養血管は,主に顎動脈の分枝である蝶口蓋動脈となる.難治性鼻出血に対する手術治療として,以前は外切開による顎動脈結紮術や外頸動脈結紮術が行われていた.近年,内視鏡や手術支援機器の発達に伴い,出血部位に近い蝶口蓋動脈を内視鏡下で結紮またはクリッピングされる症例が増えてきている.蝶口蓋動脈結紮術は,止血効果が高く,また外切開による手術や血管塞栓術に比べ低侵襲とされる.
今回われわれは,2011年1月~2015年12月の間,当科にて入院加療を要した特発性鼻出血症例を対象として,年齢,性別,基礎疾患,治療法等を検討した.手術治療されたもののうち,13例で蝶口蓋動脈結紮術が施行された.必要に応じ鼻中隔矯正術や粘膜下下甲介骨切除術も併用された.1例で再出血をきたし血管塞栓術にて止血を得た.術中所見,血管走行の解剖学的バリエーションについても,諸家の報告と合わせて報告する.

2016/06/23 17:30〜18:06 P13群

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