第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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眼窩内血腫は比較的まれな疾患であり,原因は外傷性や特発性によるものが最も多いとされるが,静脈圧の上昇,動静脈奇形等の血管病変,血友病や白血病などの血液疾患や副鼻腔囊胞に伴って発生したとされる報告もある.眼窩内血腫は,眼球突出・眼痛・複視を主症状とし,一般的には自然吸収により治癒するとされる.しかしながら,まれに眼窩内圧上昇による視力低下をきたす症例もあり,このような場合には血腫除去術が必要となる.今回われわれは,副鼻腔炎が原因と考えられる眼窩内血腫の1例を経験したので報告する.
症例は55歳女性.急激な右眼痛・複視・頭痛を主訴に近医を受診後当科へ紹介.副鼻腔CTでは右前部篩骨洞・前頭洞に軟部陰影を認め,右眼窩内には骨膜下に紡錘形の腫瘤を認めていた.画像所見より,眼窩内膿瘍や眼窩内腫瘍等が疑われた.当科受診時には視力障害は認めていなかったが,副鼻腔炎からの炎症波及による眼圧の上昇,それに伴う失明も危惧されたため,緊急に鼻内視鏡手術により篩骨洞を開放し,眼窩内腫瘤に対する治療可能な施設へ紹介した.眼窩内腫瘤は眼窩内血腫と診断され,即座に血腫除去術が施行され,眼症状は治癒した.
眼窩内血腫の原因はさまざまであるが,副鼻腔病変に眼窩内腫瘤を伴う症例では,失明の危険性を少しでも避けるため,副鼻腔病変の治療を先行するべきと考えられる.

2016/06/23 17:30〜18:06 P13群

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