サルコイドーシスは眼,皮膚,心臓など様々な臓器に生じる原因不明の全身性疾患である.今回,両鼻涙管閉塞を契機に鼻腔サルコイドーシスの診断に至った症例を経験したので報告する.
症例は32歳女性.X-3年頃より両眼の流涙と鼻閉が出現した.X-2年に近医眼科を受診し,同院で両側鼻涙管にシリコンチューブを留置したが改善なかった.他院眼科にて涙道ブジーを施行するも改善なく,当院眼科を受診した.通水検査で両側鼻涙管閉塞を認め,手術希望がありX年12月13日当科紹介となった.X+1年1月20日に両側涙のう鼻腔吻合術(以下,DCR)を施行,ヌンチャク型シリコンチューブを留置し終了した.術直後は流涙の改善を認めた.術後6ヵ月でシリコンチューブを抜去し,術後7ヵ月頃より徐々に流涙の増悪および鼻内粘膜の肥厚,充血,白色小結節病変が出現した.鼻粘膜生検を施行した結果,非乾酪性肉芽腫を認め,サルコイドーシスの診断となった.当院呼吸器内科にて全身検索を行った結果,呼吸機能,心機能等に異常所見はなく,両側肺門部リンパ節腫脹を認めるのみであった.経過中,後頸部に皮疹が出現し,近医皮膚科を受診した.生検の結果,皮膚サルコイドーシスの診断となった.その後は流涙症状や鼻粘膜腫脹は残存するも,進行性の増悪を認めず,涙道洗浄,鼻洗浄および局所ステロイド治療で外来経過観察中である.
サルコイドーシス症例2319例の検討では,9%(220例)に頭頸部領域の病変を認めており,このうち鼻腔サルコイドーシスが13%(28例)と報告されている.また,Fergieらの報告では,サルコイドーシス症例中15例(男性1例,女性14例)に鼻涙管閉塞を認め,いずれの症例もDCRが施行された.術後5年の開存率は,約50%と報告されている.今後も症状の増悪やその他臓器症状の出現に注意して経過観察していく必要がある.
2016/06/23 17:30〜18:06 P13群