第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

プログラム

No

タイトル

頸部神経鞘腫は比較的まれな疾患であるが,知覚神経より発生することが多く,運動神経のみからなる舌下神経に生じることは少ないとされている.さらに舌下神経鞘腫の多くは頭蓋内や副咽頭間隙に生じ,顎下部に生じるものはまれである.今回われわれは,術前診断が困難であった顎下部舌下神経鞘腫例を経験したため報告する.
症例は59歳女性.左顎下部腫瘤を主訴に当科を紹介受診した.初診時,左顎下部に弾性軟,可動性良好な約3 cmの腫瘤を触知した.頸部超音波検査では同部位に33×27×22 mmの低エコーを示す腫瘤を認め,左顎下腺との連続が疑われた.頸部CTでは左顎下腺内に低吸収域を示す腫瘍陰影を認め,境界は明瞭で石灰化は認めなかった.穿刺吸引細胞診では紡錘形または線維状の細胞集塊を認めたが,上皮成分は得られなかったため,診断確定には至らなかった.当初は患者の希望により経過観察としていたが,初診から3ヵ月後に腫瘤の増大を認めたため手術を施行することとした.左顎下部腫瘤は約4 cmに増大しており,穿刺吸引細胞診の再検では初診時と同様の結果であった.以上より,第一に左顎下腺良性腫瘍を念頭におき,診断と治療を兼ねて左顎下腺摘出術を施行した.顔面神経下顎縁枝を保存しつつ広頸筋下で皮弁を挙上し術野を展開したところ,腫瘍は顎下腺深部で顎下腺外に存在した.視野確保のためまず顎下腺を摘出した.腫瘍は前方および後方で神経と思われる白色の索状物と連続しており,その走行から舌下神経由来の神経鞘腫が疑われた.顕微鏡下に腫瘍の被膜間摘出を行い舌下神経は温存した.手術時間は1時間44分であった.術後の病理組織学的検査では,紡錘形細胞の腫瘍性増殖を認め,S-100の免疫染色で強陽性を示すことから,神経鞘腫と診断された.顎下腺内には病変を認めなかった.術後舌下神経麻痺はなく,術後9ヵ月の時点で再発を認めていない.

2016/06/23 18:12〜18:48 P12群

操作