〈はじめに〉クインケ浮腫は頭頸部領域にしばしば出現する神経血管性浮腫である.主として遺伝性・薬剤性・アレルギー性の要因により生じるが,原因が特定できず,診断および治療に難渋することがある.通常,発症は急激であり,喉頭浮腫を来す場合には気道確保が必要となる.今回我々は,耳下腺腫脹を契機に緩徐な経過ののちに再燃・増悪しステロイド治療に対する反応も緩慢であったクインケ浮腫様の症状を呈した症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
〈症例〉48歳,男性.先行する感冒症状の後,左耳下部の腫脹・疼痛があり当科初診された.左耳下腺炎を疑うも明らかな細菌感染所見はなく,流行性耳下腺炎も考慮しつつ,症状が強いためステロイド含めての加療を開始した.一旦症状は改善傾向をみたが,1週間後に,両側耳下部腫脹出現,その2日後に飲酒後から急に耳下部・顔面の腫脹増悪と呼吸困難感を自覚し救急外来受診,両耳下部/顎下部腫脹・喉頭蓋軽度発赤腫大を認めた.ムンプスに喉頭浮腫を合併することもあり,入院のうえステロイド・抗菌剤開始のうえ経過観察となった.一旦症状改善あり希望にて外出もされたが,その後急激に咽喉頭浮腫が増悪し,気管挿管のうえICU管理となった.5日後からようやく浮腫は改善傾向に入り,7日後に抜管できた.ムンプス既感染,クインケ浮腫の原因となる遺伝性・薬剤性・アレルギー性の要因は否定され,原因不詳で経過も緩徐,ステロイド治療への反応も緩慢ではあったが,クインケ浮腫と考えての加療にて改善を得た.その後,症状再燃は認めていない.
2016/06/23 18:12〜18:48 P12群