第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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摘出を行うも短期間に右頸部の腫脹を繰り返し,3度目の手術にてようやく診断がついたDesmoid type fibromatosisの1例を経験したので報告する.
症例は34歳男性.初診の約4ヵ月前に前頸部腫脹を自覚した.初診時の所見では右上頸部に約3 cm大の弾性軟,可動性良好な腫瘤を認めた.CTおよびMRIでは右総頸動脈分岐部外側に境界明瞭な造影効果を伴う腫瘤を認めた.
初診より5ヵ月後に神経由来腫瘍を疑って右頸部腫瘍摘出術を施行した.腫瘍に入り込む索状物を認め肉眼上,神経と思われたが腫瘍との剥離困難であったため腫瘍とともに摘出した.術後に舌の右偏倚を認めたため索状物は舌下神経であったと考え,神経鞘腫を第一に疑った.病理所見では紡錘形細胞の増生を認める点は神経鞘腫に合致したが,上皮細胞からなる小管状構造も分布しており,S-100(-)であるため神経原性の腫瘍は否定的であった.臨床的には良性腫瘍と考えられたが,bcl-2(+)により悪性疾患の可能性も否定できないという病理診断であり,確定診断には至らなかった.
その後経過観察していたが,初回手術より11ヵ月後に右上頸部に再び腫瘤を認め,再度手術の方針となった.初診時とほぼ同部位が腫脹しており,悪性疾患の可能性も疑って右上頸部郭清を施行した.病理所見では紡錘形細胞がやや密に増殖しており,Desmoid type fibromatosisも疑われる所見であったが,確定診断には至らなかった.
更に2回目手術より4ヵ月後より再び右頸部が腫脹し始め,2回目手術より7ヵ月後に右根治的頸部郭清術を施行した.病理所見では紡錘形の細胞が膠原繊維を伴いつつ錯綜配列を示しており,Desmoid type fibromatosisの診断となった.術後放射線治療の方針となり60 Gyを照射した.
Desmoid type fibromatosisは良性腫瘍ではあるが再発を生じやすいとの報告が多く,今後も厳重な経過観察が必要である.

2016/06/23 17:30〜18:12 P11群

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