第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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Madelung病は頸部,体幹および上肢に左右対称性,びまん性に脂肪組織の増殖をきたす疾患である.1846年にBrodieが初めて報告し,1888年にMadelungが多数例を報告した.地中海地方では報告が多いが本邦では極めてまれな疾患であり,我々が渉猟し得た限り1985年以降37例しか報告はない.今回我々は55歳の男性に発生したMadelung病の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
症例は1年前から頸部に多発する腫瘤を自覚し当科を受診した.両側頸部に対称性に多発する弾性軟で圧痛のない腫瘤を認めた.血液生化学検査で軽度の肝機能障害を認め,頸部造影CT検査では両側頸部対称性に脂肪組織と同程度のCT値を示す腫瘤を認めた.超音波下穿刺吸引細胞診では脂肪組織との結果であり,アルコール多飲歴があることなどのエピソードと併せてMadelung病を疑った.当初経過観察を行っていたが,圧痛を認めるなど症状の変化があったため,診断確定目的に全身麻酔下に生検を施行し確定診断に至った.
Madelung病は50~60代の男性に多く発症し,好発部位は上半身である.危険因子として,肝機能障害を伴うようなアルコール多飲者,脂質代謝異常症,糖代謝異常,ミトコンドリア遺伝子異常との関連がいわれているが詳細は不明である.悪性化は極めてまれであるが,多くの症例において美容上の問題により切除されている.最終的には生検により確定診断に至る.本症例も壮年男性の頸部脂肪腫であり,アルコール多飲歴や肝機能障害の存在からMadelung病を疑い,生検により確定診断根拠に至った.両側対称性に多発する脂肪腫を認めた場合にはMadelung病も念頭に置き,合併症の精査を積極的に施行する必要があると考える.

2016/06/23 17:30〜18:12 P11群

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