第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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はじめに:頸動脈小体腫瘍(CBT)は,頸動脈分岐部後壁外膜内に位置する化学受容体(頸動脈小体)より生じるパラガングリオーマ(PGL)の1つである.我が国では10万人に0.6~3人の発生率であり,これまでに200例程度が報告されている比較的稀な腫瘍である.最近我々が経験した1例について,文献的考察を加え報告する.
症例:34歳男性.3年前より存在する左頸部腫瘤の増大を自覚し当科を受診した.家族歴や既往歴に特記すべき事項はない.視診上左顎下部やや後方に鶏卵大の腫瘤を認め,超音波検査と頸部造影MRI検査にて,頸動脈分岐部に血流豊富な34×27×38 mmの腫瘤を認めた.CBTを疑い,カテコラミン産生腫瘍との鑑別を行うため精査を行ったが,123-I MIBGシンチで集積を認めず,血液・尿検査はいずれも正常値であり,カテコラミン産生腫瘍は否定的であった.入院後,手術前日に血管造影および栄養血管塞栓を行い,腫瘍摘出術を施行した.まず腫瘍の上下側の内頸動脈および総頸動脈を露出し血管テープをかけ出血に備え,その後,腫瘍を全摘出した.腫瘍は一部総頸動脈を取り囲み外膜が固着しており,Shamblinの分類ではGroup2に属すると考えられた.手術時出血量は51 mlであり,術後に神経障害を認めなかった.病理組織検査では,類円形の核と顆粒状の細胞質を有する細胞の胞巣状増殖を認めた.悪性所見は認めなかった.
考察:CBTは血流が豊富であり,手術中の出血コントロールが重要である.予防としては,手術前日に栄養血管を塞栓した.また術中の出血に対してはバイポーラで丹念に焼灼しながら摘出を進めた.また出血に備え,人工血管(古井式バイバルーンシャント),大伏在静脈採取の準備を行って手術に臨んだ.

2016/06/23 17:30〜18:12 P11群

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