第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【はじめに】鰓耳腎症候群(Branchio-oto-renal syndrome)は,頸瘻・耳瘻孔・外耳奇形などの鰓原性奇形,難聴,腎尿路奇形を3徴とする稀な疾患である.常染色体優性遺伝の形式をとり,腎臓,第2鰓弓に発現するEYA1遺伝子の変異が約40%の頻度で認められている.本邦での推定患者数は約300人といわれており,現在までに報告は少ない.今回我々は,両側頸瘻を契機に診断された鰓耳腎症候群の1例を経験した.
【症例】48歳,男性.先天性腎低形成,先天性難聴の既往がある.生下時より両側耳前部,両側頸部に瘻孔を認め,少量の浸出液が漏出していた.耳前部の瘻孔は2ヵ月前に当院形成外科で切除された.今回は両側頸瘻の加療希望があり当科受診,手術の方針となった.頸瘻は両胸鎖乳突筋前縁,甲状軟骨下縁のレベルに開口していた.術前に瘻孔から造影剤を注入しCTを撮影した.瘻孔は舌骨方向の外側より,扁桃窩付近に連続していたが,咽頭への交通は認めなかった.また,CT画像を3D化することで瘻孔の構造を分岐も含め立体的に評価し得た.全身麻酔下に両側頸瘻を損傷することなく摘出した.術後経過は良好であり,術後4日目に退院した.
鰓耳腎症候群は第2鰓弓奇形,難聴,外耳・中耳・内耳奇形,腎奇形の4つの主症状があり,家族歴がない患者では主症状を3つ満たせば本症と診断される.本症例では,以前より腎奇形,難聴を指摘されており,今回第2鰓弓奇形が見つかったことで鰓耳腎症候群の診断に至った.
当日は,画像所見を供覧するとともに,文献的考察を加えて報告する.

2016/06/23 17:30〜18:12 P11群

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