第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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再発性多発軟骨炎(relapsing polychondritis, RP)は,全身の軟骨を侵す,慢性・再燃性の炎症を特徴とする比較的稀な疾患である.耳鼻咽喉科の取り扱う領域である耳介,外鼻,喉頭・気管の軟骨に初発することも多く,内耳障害をきすことも少なくないが,聾に至る症例は稀である.今回われわれは,両側聾をきたした再発性多発軟骨炎の症例を経験したので報告する.
症例は69歳女性.2年前から右難聴を自覚していた.X年5月1日,左耳介腫脹が出現,近医で加療していたが,歩行時のふらつきが出現し徐々に増悪,歩行困難となったため5月18日当院救急外来受診し,経過観察目的に入院となった.翌日,当科紹介となり,左耳介の発赤・腫脹を認め,右混合性難聴,左感音難聴の所見を呈したが,明らかな自発眼振はなかった.プレドニゾロン30 mgから漸減加療開始とし,5月31日に退院となった.しかし,外来経過観察中の6月17日から聴力低下が出現し,6月23日の定期外来受診時,聴力検査で両側聾であった.同日入院のうえ,ヒドロコルチゾン500 mgからの漸減加療を行ったが,改善は乏しく,聴性脳幹反応も両側無反応,左耳介所見も改善しなかった.7月15日ころから両側眼球結膜の充血が出現,8月初めより右耳介の発赤・腫脹が出現した.9月8日再診時,数日前からの嗄声の訴えがあり,喉頭内視鏡で披裂部の軽度発赤,声門下に軽度の腫脹・発赤を認めた.以上の経過から再発性多発軟骨炎の診断で他院リウマチ膠原病内科へ紹介,ステロイドパルス1回,エンドキサンパルスを2回施行した.耳介所見,眼所見,喉頭所見はすみやかに改善したが,聴力の改善はなく,維持療法の方針で外来経過観察中である.

2016/06/23 18:06〜18:36 P10群

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