第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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タイトル

[はじめに]人工内耳(CI)や補聴器(HA)装用後の聞き取りの改善には,適切なリハビリテーションが不可欠である.言語聴覚士による指導や日常生活での会話練習などがリハビリとして行われるが,システム化されたリハビリが確立されているとは言い難い.Kawaseら(2009)は視覚・聴覚複合刺激を用いた聴覚トレーニングの有用性を検討し,単語の反復聴取,聴覚と視覚の併用,正当のフィードバックが聞き取り改善に有用であったと報告している.これらを踏まえ当科では装用後半年以上が経過しても聴き取りの改善が不十分なCI装用者ならびにHA装用者を対象に在宅で実施可能なことばの聞き取り訓練を実施している.
[目的]聞き取り訓練の概要を報告するとともに,訓練開始前・開始1ヵ月での語音検査を比較し装用開始半年以上を経過した症例に対する聞き取り訓練効果を検討する.
[方法]対象は聞き取り訓練を実施している5例.57-S語表を用いた語音明瞭度検査・4モーラ単語を用いた単語聴取検査を実施し訓練開始前・開始1ヵ月目の結果を比較した.また単語の聞き取り検査は訓練で使用した語(訓練語)と訓練で使用しなかった語(非訓練語)から成り,それぞれの聴取率についても開始前・開始1ヵ月で比較した.
[結果]対象の年齢は52歳(35歳~74歳),CI装用者3名,HA装用者2名であった.語音明瞭度は訓練前後で大きな変化を認めなかった(開始前25.2±17.4%→開始1ヵ月24.8±23.4%).単語聴取率は訓練前に比し訓練後は全例で改善を認めた(訓練前31.5±27.3%→開始1ヵ月56.5±31.2%).非訓練語に関しても4例で改善を認めた(訓練前33.5±29.8%→開始1ヵ月44.0±38.1%).
[考察]以上の結果から,装用後一定期間経過した症例であっても聞き取り訓練を行うことで,ことばの聞き取りが改善する可能性が示唆されたが,今回の検討では症例数が少なく訓練効果を追跡した期間が短いため有用性の検討には症例数の蓄積と長期的な追跡が必要である.

2016/06/23 17:30〜18:06 P9群

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