第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

プログラム

No

タイトル

2015年度より聴覚障害に対する身体障害者認定基準にABR等の実施が盛り込まれたこともあり,他覚的聴力検査に対するニーズは高まっている.各種の他覚的聴力検査のなかでもABRは結果の再現性が高く,検査技術も確立されており信頼性が高い.しかし筋電図の混入を防ぐため小児では鎮静が必要となり,成人でも安静臥床を強いられる.また検査室が長時間占拠されるため他の検査を行うことができず,小児では鎮静にかける時間のため検査スタッフの超過勤務が発生するなど問題も多い.我々は一昨年に小児に対して覚醒下ABRを試用し報告を行った.
今回は対象を成人へ拡大し,その有用性と課題を検討した.対象は2015年6月から9月にかけて当科を受診した難聴患者65名121耳である.以前に試用した際は従来のABRと同様に刺激回数を固定し測定していたが,現在では一音圧当たりの刺激時間を固定せず,実際の波形を確認しつつ波形が読み取れる段階で検査を終了するという方法が推奨されている.今回この方法で検査を行ったところ一音圧あたりの検査時間はおおむね1~2分であった.この方法の場合,刺激時間を固定していないため検査者自身がABR波形を読み取れる能力を有していなければならない.また小児で問題となった基線の揺らぎに関しては,成人の場合ほとんど問題にならないレベルであることが分かった.
以前の発表で述べたように通常外来程度の騒音には影響を受けないため強いて防音室内で行う必要はなく,親機が電波を受信できる範囲でなら患者が移動しても構わない.ただし暴れる小児など電極を安定的に装着できない場合は検査困難である.
今回の経験では両耳の測定でも電極の着脱を含めておおむね30分以内で終了できるため,検者・被検者ともに時間的な負担を大きく軽減できると考えられた.

2016/06/23 17:30〜18:06 P9群

操作