第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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グリセロールテスト(以下,「Gテスト」と略す)は蝸牛機能を利用した内リンパ水腫推定検査の一つであり,メニエール病をはじめとする内リンパ水腫疾患が疑われる症例に対して広く行われてきた.メニエール病の難治例における難聴は,寛解,増悪を繰り返すなかで徐々に進行し,いずれ不可逆となることが多い.メニエール病の聴力について,長期予後に関する因子の報告は多くなされているが,短期予後に関する因子についての報告は少ない.
今回我々は,最近2年間に当科でGテストを施行した56症例について検討し,急性感音難聴例において,Gテストの結果から聴力の短期予後の推定が可能かどうかを検討した.聴力は突発性難聴の聴力改善判定基準を用い,治療開始から6ヵ月までの間での最良の聴力で判定し,「回復」以上と「不変」とに分けて比較した.
Gテストの結果は陽性が9例,疑陽性8例,陰性は39例であった.治療は基本的に,陽性であればイソソルビドなどの利尿剤の内服,疑陽性あるいは陰性であればプレドニゾロンの全身投与(点滴または内服)としたが,過去の経過や難聴の状態により,一部の例ではこれらの薬剤を併用した.
Gテスト施行前の5分法聴力は,陽性群が29.0 dB,疑陽性群が23.1 dB,陰性群が38.4 Bであり,疑陽性群が陰性群に対して有意に良好な聴力閾値であった(Steel Dwass法,P=0.041).各群間で,めまいを伴う症例数,眼振の有無には有意な差がなかった.聴力経過を比較すると,回復以上は陽性群9例中8例,疑陽性群8例中5例,陰性群39例中19例で,陽性群が陰性群に対し,有意に「回復」以上となる例数が多かった(Steel法,P<0.05).
以上から,Gテストの結果が陽性である例はより聴力改善が期待できると考えられ,内リンパ水腫が疑われた場合,Gテストの結果から,短期の聴力予後を推定できる可能性が示唆された.

2016/06/23 17:30〜18:06 P9群

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