急性感音難聴は，突発性難聴，メニエール病，自己免疫性疾患に付随する感音難聴など様々な疾患で生じる．通常，全身ステロイド投与が行われるが，全身ステロイド投与が無効な症例や既往症により全身ステロイド投与が困難な症例もある．今回われわれは，このような症例に対して救済治療として鼓室内ステロイド注入療法を施行したので報告する．
対象症例は突発性難聴，メニエール病，糖尿病性腎症による透析患者に伴った急性感音難聴，パニック障害患者での急性感音難聴，高安病・多発性血管炎性肉芽腫症・全身性エリテマトーデスなどの自己免疫性疾患に伴った急性感音難聴などとした．救済治療としての鼓室内ステロイド注入療法でもやはり無効である例もある一方で，全身ステロイド投与が無効であった症例でも，鼓室内ステロイド注入療法により改善する例がみられた．全身ステロイド投与により精神症状が出現したため全身ステロイド投与ができなかったパニック障害患者例では鼓室内ステロイド注入療法が有効であった．
鼓室内ステロイド注入療法の有効性に関しては議論の多いところではあるが，全身ステロイド投与無効例や全身ステロイド投与困難症例では鼓室内ステロイド注入療法を救済治療の一つとして考慮すべきであると考えた．
2016/06/23 17:30〜18:06 P9群