第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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補聴器フィッティングに難渋する場合,患者は補聴器のメーカーや器種に疑問や不満をもつことが少なくない.患者自身が使用する器種を選択すれば,そのような疑問や不満が生じにくいと考え,当科では比較試聴システム(メーカーの異なる複数の器種を聞き比べて患者が器種を選択し,両耳/片耳装用も比較して選択するシステム)を導入している.今回我々は,このシステムを用いて補聴器フィッティングを行った患者の補聴器購入率や器種選択の理由,両耳装用率を中心に検討したので報告する.
2006年6月~2014年5月に当科を受診した補聴器装用経験のない難聴患者1012例(男性458例,女性554例)を対象とした.年齢は17~101歳(平均73.8歳),平均聴力レベル(4分法)は良聴耳5~111 dB(平均48.2 dB),非良聴耳26~115 dB(平均62.2 dB)であった.器種選択については,適合可能なメーカーの異なる3~4器種を試聴してもらい,患者自身が1器種を選択した.これを言語聴覚士が1時間程度かけて行った.両耳貸出の基準は,良聴耳が健聴ではない,非良聴耳が聾ではない,かつ平均聴力レベルの左右差が40 dBHL以内とした.基準内の聴力レベルであれば,患者が希望しない場合を除いて,両耳貸出とした.調整は約3ヵ月間,なるべく頻回(基本は週1回)に行った.3ヵ月後に患者自身が購入決定(両耳/片耳の選択を含む)を行った.結果,補聴器の購入率は97%(1012例中982例)で,購入価格は平均10.7万円だった.器種の選択理由(複数回答可)は音質749例(74%),安価471例(47%),機能357例(35%)の順に多かった.両耳貸出をした817例中,両耳購入は782例(96%)だった.本邦での従来の報告に比べ,今回の補聴器購入率と両耳装用率はかなり高率となった.特に両耳装用率の高さには比較試聴システムが寄与したと考えられた.ただこのシステムには時間と人員が必要であり,普及には課題が残る.

2016/06/23 17:30〜18:06 P9群

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