第78回 耳鼻咽頭科臨床学会 総会・学術講演会

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【はじめに】錐体尖コレステリン肉芽腫では,神経障害や,内耳障害などを呈する場合がある.今回,我々は交通外傷が原因と考えられる錐体尖コレステリン肉芽腫と,それに伴う混合性難聴を呈した1例を経験したので報告する.
【症例】35歳男性.20歳の頃に交通外傷の既往あり.徐々に増悪する左難聴と左耳鳴を主訴に当科を受診した.両側鼓膜は正常であったが,純音聴力検査では左の混合性難聴を認めた.また,CTでは左錐体尖に骨破壊性病変を認め,左内耳道前壁と,蝸牛の一部の骨壁が破壊されていた.さらにMRIでは,左錐体尖にTI強調画像,T2強調画像で高信号を呈する囊胞状の病変が存在し,蝸牛神経を圧排・伸長する所見を認めた.これに対して術中ナビゲーションを併用しながら迷路下法でコレステリン肉芽腫にアプローチした.ドレーンチューブを2本留置した後,鼓膜チューブを留置して終刀した.術後5ヵ月のMRIではコレステリン肉芽腫の著明縮小と,ドレーンチューブ周囲の含気化を認めた.また,蝸牛神経の圧排像も解消した.術後7ヵ月の純音聴力検査では気導聴力,骨導聴力ともに改善を認めた.
【考察】多くの錐体尖コレステリン肉芽腫は安定した経過をたどるため画像フォローのみとされることが多いが,神経症状を認める際は手術が望ましいと報告されている.本症例は骨導聴力の低下を認めており手術適応ありと判断した.また,術後にコレステリン肉芽腫が縮小し,聴力が改善したことから骨導聴力の低下は内耳有毛細胞の障害ではなく蝸牛神経の圧排・伸長が原因であった可能性と,気導聴力の低下は内耳骨包融解に伴う内耳伝音障害が原因であった可能性があると考えた.

2016/06/23 18:00〜18:36 P8群

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